狐 柴 行 妻 寄 劇 千 八 兎 門 止 子 身 哉 里 方 翔 何 依 象 於 邊 殊 各 我 蕭 林 禽 草 海 風 異 宇 條 阻 獣 野 民 雨 氣 |
八方各異氣 八方 各ゝ気を異にし 千里殊風雨 千里 風雨を殊にす 劇哉邊海民 劇しい哉 辺海の民 寄身於草野 身を草野に寄す 妻子象禽獣 妻子は禽獣に象 行止依林阻 行止は林阻に依る 柴門何蕭條 柴門 何んぞ蕭條たる 狐兎翔我宇 狐兎 我が宇に翔ける |
八方の地は それぞれ気候が違うし 千里もへだたれば雨風の様子も異なる なんと艱難に満ちていることよ 辺境の地で暮らす民は 原野に身を寄せて生活を営む 妻子はまるで禽獣のような身なりをしているし 出て行こうにも周囲は険しい地形や山林に囲まれている 柴で作った門はわびしく 狐や兎が我がもの顔で家の中をかけまわる |
【『泰山梁甫行』】この作品は、文帝即位後、曹植が痩せた土地を転々とさせられた時代に、民の困窮を目の当たりにして作ったという説と、後漢末の混乱による流民の悲しみをうたったという説がある。 【八方】東西南北の四方と東南・東北・西南・西北の四維をいう。 【辺境の地】原文「邊海」。海は本当の海ではなく、晦(くら)いの意味で、僻遠の地を指す。