『闘鶏』


長 願 扇 長 嚴 觜 悍 輝 雙 羣 闘 長 衆 主 清 遊
得 蒙 翼 鳴 距 落 目 羽 翹 雄 鶏 筵 賓 人 聽 目
擅 狸 獨 入 往 輕 發 邀 自 正 觀 坐 進 寂 厭 極
此 膏 翺 青 往 毛 朱 清 飛 翕 閒 戯 樂 無 宮 妙
場 助 翔 雲 傷 散 光 風 揚 赫 房 客 方 爲 商 伎




遊目極妙伎 目を遊ばしめて妙伎を極め
清聽厭宮商 清聴は宮商に厭く
主人寂無爲 主人 寂として為す無く
衆賓進樂方 衆賓 楽の方を進む
長筵坐戯客 長筵して 戯客 坐し
闘鶏觀閒房 闘鶏 閒房に観る
羣雄正翕赫 群雄 正に翕赫(きゅうかく)たり
雙翹自飛揚 双翹 自から飛揚す
輝羽邀清風 羽を輝かせて清風を邀え
悍目發朱光 目を悍らせて朱光を発す
觜落輕毛散 觜 落ち 軽毛 散じ
嚴距往往傷 厳距 往往に傷つけり
長鳴入青雲 長鳴 青雲に入り
扇翼獨翺翔 翼を扇ぎて 独り翺翔す
願蒙狸膏助 願わくは 狸膏の助けを蒙りて
長得擅此場 長く此の場を擅にするを得ん
優美な舞踊は堪能してしまったし
美しい音楽も十分に聞き飽きてしまった
この家の主人はもはやすることもなく
客たちは別の楽しみを勧めた
長い竹むしろに客人が居並び
静かな部屋から闘鶏に興じるさまを眺めている
多くの鶏は盛んな意気を見せ
二本の長い尾を持ち上げて威嚇する
羽根をはばたかせ風を随え
目は血を滾らせて赤い光を放つ
嘴は欠け 抜け落ちた羽が舞い散り
するどい爪は何度も痛手を負わせた
勝利を告げる鳴き声は高く青空に溶け
勝者は意気揚揚と翼をはためかせる
どうか狸膏の助けを借りて
いつまでもこの場の英雄でありたいものだ
【『闘鶏』】『楽府詩集』の注に引かれた『鄴都故事』によると、太和年間に「闘鶏台」がという建物が築かれた。よってこの作品は、明帝の時代のものではないかとされている。しかし、劉楨・応応瑒にも同タイトルの作(『芸文類聚』巻91収録)があり、競作ではあるとすれば、まだ七子が健在だった建安年間の作ということになる。作品の雰囲気からは建安年間のものであるような気がする。 【狸膏の助け】「狸膏」は狸(野生の猫)のあぶら。鶏は狸を恐れるので、それを塗って相手を怯えさせるらしい。しかしそんなことをしたら、塗られた本人(本鶏)が怖がるのでは…?ともかくドーピングの一種。 

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