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『室思(しつし)』


髣 端 慊 不 中 良 各 念 愁 沈
髴 坐 慊 聊 心 會 在 與 憂 陰
君 而 常 憂 摧 未 天 君 爲 結
容 無 飢 餐 且 有 一 生 誰 愁
光 爲 空 食 傷 期 方 別 興 憂



沈陰結愁憂 沈陰 愁憂を結ぶ
愁憂爲誰興 愁憂 誰が為にか興る
念與君生別 念(おも)う君と生別して
各在天一方 各ゝ天の一方に在るを
良會未有期 良会 未だ期有らず
中心摧且傷 中心 摧け且つ傷む
不聊憂餐食 餐食を憂うるに聊らず
慊慊常飢空 慊慊として常に飢空たり
端坐而無爲 端坐して爲すところ無く
髣髴君容光 君が容光を髣髴す
心は重く沈み愁いに閉ざされる
この悲しみは誰のせい
思えばあなたと生きながらに引き裂かれ
それぞれ天の両端にはなれて暮らしている
いつ再会できるともわからず
私の胸は今にも張り裂けそうに苦しい
食事が進まないための虚しさではなく
満たされぬ想いに我が身は空虚で
ぼんやり坐っているだけで何も出来ずにいると
あなたの面影ばかり浮かんできます
【室思】徐幹の有名な作品。『玉台新詠』では全6章の作品としている。本によって全5章のものがあったり、若干異なる。


賤 毎 何 時 忽 人 鬱 君 悠 峨
躯 誦 爲 不 若 生 結 去 悠 峨
焉 昔 自 可 暮 一 令 日 萬 高
足 鴻 愁 再 春 世 人 已 里 山
保 恩 惱 得 草 間 老 遠 道 首

峨峨高山首 峨峨たり高山の首
悠悠萬里道 悠悠たり萬里の道
君去日已遠 君去りて日已に遠く
鬱結令人老 鬱結 人をして老いしむ
人生一世間 人生 一世の間
忽若暮春草 忽として暮春の草の若し
時不可再得 時は再び得べからず
何爲自愁惱 何爲れぞ自ら愁惱するや
毎誦昔鴻恩 毎に昔の鴻恩を誦す
賤躯焉足保 賤躯 焉んぞ保つに足らん
そびえ立つ山の頂
はるばる続く万里の道
あなたがいなくなってから時は流れ
心は愁いに結ばれたまま年老いていくよう
人としてこの世に生をうけても
たちまち晩春の草のように滅びてしまう
再会は叶わないかもしれないけれど
嘆き悲しんだところでどうにもならない
あのころ格別なご恩を受けることができただけで
こんな私には身に余る光栄だったのだから





何 思 明 自 君 人 徙 飄 願 浮
有 君 鏡 君 獨 離 倚 飄 因 雲
窮 如 暗 之 無 皆 徒 不 通 何
已 流 不 出 返 復 相 可 我 洋
時 水 治 矣 期 會 思 寄 辭 洋

浮雲何洋洋 浮雲 何ぞ洋洋たる
願因通我辭 願わくは因りて我が辭を通ぜん
飄飄不可寄 飄飄として寄す可からず
徙倚徒相思 徙倚として徒らに相思う
人離皆復會 人離れて皆 復た会するに
君獨無返期 君独り返る期無し
自君之出矣 君の出でてより
明鏡暗不治 明鏡 暗くして治せず
思君如流水 君を思いて流水の如し
何有窮已時 何ぞ窮まり已む時有らん
空をただよう雲に
私の言葉を託して届けようと思ったけれど
ふわふわと流れていくだけ
あてどなく辺りを彷徨いあなたのことを考える
離れ離れになってもまた再会できる人もいるのに
あなたはいつまでもお帰りにならない
あなたがここを去ってから
鏡はくもったまま手入れもしない
あなたへの想いは流れる水のように
いつまでも尽きることなくあふれてくるのです




(4章以下、準備中。)


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