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『清河に於て船をひくの士、新たに婚し、妻に別るるに見う』



比 願 會 歳 但 不 身 枯 蝉 冽 蟋 涼 宿 與
翼 爲 合 月 借 悲 體 枝 吟 冽 蟀 風 昔 君
戯 雙 安 無 歳 身 忽 時 抱 寒 鳴 動 當 結
清 黄 可 窮 月 遷 遷 飛 枯 蝉 相 秋 別 新
池 鵠 知 極 馳 移 移 揚 枝 吟 随 草 離 婚



與君結新婚 君と新婚を結び
宿昔當別離 宿昔 当に別離すべし

涼風動秋草 涼風 秋草を動かし

蟋蟀鳴相随 蟋蟀鳴いて相随う

冽冽寒蝉吟 冽冽 寒蝉吟じ

蝉吟抱枯枝 蝉吟じて枯枝を抱く

枯枝時飛揚 枯枝 時に飛揚す

身體忽遷移 身体 忽ち遷移す

不悲身遷移 身の遷移するを悲しまず

但借歳月馳 但だ 歳月の馳するを惜しむ

歳月無窮極 歳月 窮極無し

會合安可知 会合 安んぞ知る可けん

願爲雙黄鵠 願わくは 双黄鵠と為りて

比翼戯清池 翼を比べて清池に戯れんことを

君と結婚したばかりなのに
しばらくの間 離れ離れに暮らさなければならない
涼しい風が秋の草たちを揺らし
コオロギが雌雄で互いに呼び合っている
ひぐらしは寒々と鳴き声を上げて
枯れ枝につかまっているけれど
枯れ枝を風が揺らしたものなら
その体は たちまちどこかへ飛ばされてしまう
体が飛ばされるのを悲しんでいるわけではないが
こうして 離れ離れのままに年月を重ねていくことが寂しくて仕方ない
時間はどこまでも流れていく
それなのに君とはいつ再会できるのかわからないまま
早く僕たちもつがいの黄鵠のように暮らせたらいいのに
翼をならべ 清らかな水をたたえた池で一緒に遊んでいるような
【『清河に於て船をひくの士、新たに婚し、妻に別るるに見う』】この作品が作られた由来は、タイトルが示すところによると、曹丕が新婚夫婦の別れの場面に遭遇して、そこからイマジネーションを得て作られたということになる。繊細な描写に限りない寂しさが漂う清新な作品。同じく「生きながらの別れ」を題材とした曹植の作品に『七哀』があるが、両者を比べれば、この兄弟の性格の違いが良く分かる。また、この一編には、妻からの返事の体裁をとった続編がある。(※一説に徐幹の作)

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